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③
一人ずつ自己紹介を、と言われ、先頭の王女様が一歩前に出て礼をする。
各自、名前と出身国、レベルや特技を胸を張って声高らかに述べていた。本当に胸を張れるほどの実力者揃い。
全員レベルが100を超えてるっておかしくない? え? 僕一桁なんだけど…。多分5ぐらい。
「次、どうぞ」
促してくる神官様。それにつられて勇者様の目も僕に向けられる。
「べ、ベルネ・シュミッツです。エスペルダ王国出身で、レベルは…その…」
僕は言い淀んだ。
勇者様の視線から逃れる様に俯いて、顔も見れなかった。この流れで『レベル5です。特技は家事全般です』、なんて言えるかあぁぁ!
許されるのは可愛いロリかショタだけだ!
「申し訳ございません、ハヤト様。この者はずっと勇者様に憧れを抱いておりましたので、感極まってしまったようです」
「別に構わねーよ。で、そいつは何ができんの?」
僕をフォローしてくれた神官様に勇者様はぶっきらぼうに言う。
「この者は…能力はないのですが、勇者様の身の回りの世話――例えば、食事や宿の手配、食料の買い出し、荷物持ちなど、雑用係として付き添わせます」
………え?
身の回りの世話? 雑用係?
「ふーん」
「もし、お気に召さないようでしたら、他の者に変えることもできます故――」
「そいつでいいよ。誰だって一緒だろ」
勇者様も全く僕には興味がないみたいだ。
でも雑用係と聞いて肩の荷が下りた。
10人兄弟の下から2番目という最悪な立場に生まれ、最後の最後に末っ子として生まれてきた唯一の女の子である妹を神のように崇め祀る家族達から奴隷のごとく扱き使われてきたから、雑用係ならどんとこいだ。
僕の紹介が終わると、僕だけ部屋から外に出され、さっきまで穏やかな笑顔を浮かべていた神官様に「この役立たず」という言葉を頂いたのち家に帰された。酷い。帰り道、ちょっと泣いた。
信頼の厚い某システムがはじき出したため、仕方なく僕を呼んだというのだから、こんな態度も頷ける。そんなに嫌なら呼ばなければいいのに、システムに口出しする勇気はないらしい。魔王討伐がうまくいかなかったら自分の責任になるからだろうけど。
この腑抜けが!、と落ちてる石を蹴ってみたけど、自分のつま先が痛いだけだった。
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