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  「帰ったかベルネ!」 「よくやったじゃないか!」 「勇者様に同行を許されたと聞いたぞ!」 「魔王討伐まで一緒に旅ができれば、一生遊んで暮らせるくらいの報酬がもらえるらしい!」 「ただし、魔王討伐前に解雇されたら‘ゼロ’だからな!」 「何としてでも最後まで食らいつくんだ!」 「どれだけ冷遇されても耐えろ!」 「途中で帰ってきたら、オマエの居場所はないと思えよ!」  もう家を出て家族もいる兄達も勢ぞろい。男衆全員で僕を脅してきた。一言も僕に対する激励の言葉とかないんですけど。   「そうそう、神官様から聞いたんだけど、前払いでお兄ちゃんがずっと欲しがってたダウソンの掃除魔道機もニショナルの全自動洗濯乾燥魔道機と冷蔵魔道庫でしょ、あとなんだっけ食洗魔道機? 全部くれるんだって」 「え…! ぜ、全部!? うっそ!」 「本当だよ? 私が嘘つくと思う?」 「思いませんっ!」 「でも、お兄ちゃんが途中で帰ってきたら、没収されちゃうんだって。だから…」 「うんうん! 兄ちゃんめっちゃ頑張るよ! 魔王倒してくるよ!」 「ありがとう、お兄ちゃん。頑張ってね!」  と天使みたいに可愛い妹が微笑んだ。  これだけが癒しだ。  でも、知ってるんだ。学園で、「あんな落ちこぼれの兄いらない」って言ってるの。そんな反抗期突入してる妹も大好きだよ。お金のためだって、お兄ちゃん分かってるけど、大好きだよ。  本当に次の日、下っ端の兵士たちが文句を垂れながらも家庭用魔道具を運んできた。  僕の目にはすべてが輝いて見えた。家事に追い立てられる生活から解放されるんだ。これ以上ないくらい嬉しい。  煌いて見える魔道具たちに頬をスリスリする。   「これからは自分の時間が取れる…!」 「趣味が家事のくせに何言ってんだよ」 「旅に出る前に庭の木剪定していけよ」 「時間があるなら書庫の整理しておいてくれ」  結局、出発ぎりぎりまで家事をして終わった…。ぐすん。   

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