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  勇者様御一行が寛がれている間、掲示板に張られた依頼票から手ごろな依頼探し。  依頼を受けた後、両手どころか両足まで花状態の勇者様に僕はひっそりとついて行く。僕以外の5人は出発前の3日間、(健全な意味で)親睦を深めていたようだから全く入る隙はない。勇者様はご自分の腕を奪い合う美女たちを面白そうに眺めながらも、満更ではなさそうだ。  勇者って肩書があるから、その扱いなんだからな!、と心の中で悪態を吐いてみる。ただの負け惜しみだ。  始まりの森に到着し、足手まといにしかならない僕は草むらに身を隠す。  するとすぐに勇者様一行は目的のモンスターを見つけて、戦闘に入った。暴力や血が苦手な僕はその光景を見ないように顔を隠す。本当に無理なんだからしょうがない。  じゃあ辞退しろよって言われそうだけど、そういう訳にもいかない。  もうすでに兄6人が家を出ているけれど、僕を含めまだ4人を養っている万年金欠状態の実家のために耐えるしかない。  お古ばかりの僕の服とは違って、妹には新品の可愛い服を買ってあげないといけないから、最近は特に金欠に輪がかかっているのだ。 「ちょっと、荷物持ち、戻りますわよ」  と巨乳王女様。なんで僕なんかに声をかけてくるのかというと、王女様のクソ多い荷物を全部預かっているからだ。無限収納袋(インベントリ)は勇者様と僕のみが所持しているから、女性陣が持ちきれなくなった荷物は必然的に僕に預けられる。  この袋を取り上げられてしまえば、僕は用ナシだろう。これはなんと言われようが死守しなければならない。  草むらから顔を出すと、確かに戦闘は終わっていて、「頼りになるじゃん」と勇者様に褒められた女騎士が頬を赤く染めながら「こんなのは朝飯前だ」と分かり易い反応を返していた。  そこに割り込む後の3人。  どうやら勇者様の第一夫人の地位を取り合っているらしい。魔王討伐後、勇者様は自分の世界に帰ることもできるが、ハーレムメンバーと結婚し、この世界で暮らすこともできる。この世界に残れば寿命を終えるまで生活は保障され、美女に囲まれ過ごすのだから、いいこと尽くめだ。ちなみに勇者の子供には残念ながら『ちーと』は遺伝しないため、一般国民と同じ扱いだ。  宿をとり、明日から国境を目指して出発することを伝える。すべてスケジュールは神官様が用意してくれた。問題なく進めば3か月後には魔王の城に着く。これを達成すれば歴代最短記録となるに違いない。    予定を伝え終えると、勇者様は初めての戦闘で疲れたのか、「寝る」と夕食も食べずに部屋に戻ってしまった。  美女四人は勇者様がいないことをいいことに勇者様が『あたり』か『はずれ』かなんて話をしている。こいつら、勇者様の前では猫被って媚び売ってるのか。まあ、会って間もないし、あんまり情もないのが実状だろう。僕も勇者様に特別な感情なんてない。なんと言ってもお金のためだから!

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