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   これ以上関係を悪くするわけにはいかない。表立って動いて、ケチをつけられたりやっかみを持たれると困る。  『一生遊んで暮らせる金を手に入れる』という任務を遂行するには、僕は勇者様にある程度は役に立つと思われていなければいけない。けれど勇者様の隣を取り合いしてる美女たちの邪魔にならないように、気配を消しておかなければいけない。  今回は美女たちに見られたのが良くなかった。ひっそり行こう。彼女らに見つかれば追い出されることは目に見えている。少しご機嫌を取りつつ僕は裏方に徹することにした。  はぁ、辛い。この17年で培った風見鶏みたいな性格からは抜け出せない。いや、反対に役に立ってるのかな?  依頼を受けながら旅を続け、国境に着き隣国に入る。この国では中級者用のダンジョン攻略が目的だ。  王都につく頃には勇者様は剣を振るうことに慣れ、魔法も操れるようになっていた。    攻撃魔法が得意な巨乳王女様から呪文を教えられ、初めて勇者様がご自分の火属性の魔法でモンスターを倒された時は、感激もあったけれど、その肉の焼ける匂いで吐いた。誰がって、僕が。  女性陣に馬鹿にされるのが嫌で、木に隠れて腹にある物を全部もどして土に帰した。食べ物というか焼いた肉が見れないし、もう焼いてる匂いも無理。  夕食を食べずに「疲れた」と部屋に戻った勇者様も僕と同じくグロッキー状態だと思い、宿の主人に朝食には肉を入れず軽めに、果物は酸味の少ないものを出すようにお願いした。  女性陣は平然と食事をとっていたので、街で有名なスイーツを買ってきて、ご機嫌を取って置いた。何事もぬかりなく。  翌朝の朝食時にメニューを見てホッとした様子の勇者様を見て、同情を禁じ得なかった。  今までの勇者様達もこんな思いをしていたのだろうか。勇者史にそんなことは書いてなかった。だから平然と倒していたと思っていたのに。  勇者様の世界にはモンスターというものがいないのかもしれない。そんな平和そうな世界から召喚されて、モンスターを倒し続けなければいけない勇者様の立場がどうしてかとても憐れに思えた。  そんな勇者様の役に少しでも立ちたいな。そう思い始めた瞬間だった。  

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