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第17話 半ベソ野郎

エスカレーターでなんとか展示室へと到着したそこは広々としていて、客は思い思いへと散らばっていた。 お陰でさっきまでの激混みが嘘の様に余裕を持って移動できる。 「おいっ、水中トンネル向こうだってよ」 入り口で貰っていたパンフレットを見ながら尚に声を掛けると、白けた目で見られる。 「なんだよ?」 「一気にトンネルまで行ってどうするんだよ。ここも順番に見て行くに決まってるだろ?」 「はぁっ?!全部見てたらお前の好きなペンギンとか見る時間ねぇし、イルカショーの時間にも間に合わねぇぞ?それでもいいのかよ」 既にチェックした館内の案内によると1度3階まで上がって展示を見てから階下へ順に降りる仕組みになっていた。 確かにここ3階に魚は多いが、イルカショーは2階で時間は3時半がショーのラストだし、ペンギンコーナーは2階から1階への丁度中間にある。 ちなみにカフェと土産物屋などは1階だ。 俺が強目に発言すると、尚がグッと唇を噛み締めて若干下へと視線を落とす。 まさかこの歳で泣くのか?! 「…見たい」 まさかと心配したが、さすがに泣くことはなかった。 でも他の魚も見たい気持ちが溢れているのは、その様子からもよく分かる。 喧嘩?と客が訝しがりながら横を通りすぎていく。 仕方ねぇな~と俺は溜め息をついた。 「魚も見ていいぞ。でもペンギンとイルカショー見たいなら、ひとつのホールは15分位で移動するからな」 そう俺が言うと、尚が顔を上げた。 「えへへ~、りょうか~い!」 その顔を見れば半ベソかいてたのがよく分かる。 大人だろうに、泣くとか…どれだけ見たかったんだ。 誤魔化す様に笑った尚は、さっそく展示されている近くの水槽へとそそくさと歩いて行った。

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