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第19話 仕返し

尚はドヤ顔で「これは、ちょうちんあんこうの大人のオスでーす」と言った。 「はっ?!こんなのが?」 あまりの大きさの違いに呆気に取られる。 メスがデカイのにオスはちっさすぎねぇか? 鏡餅に大豆乗せたレベルだ。 「深海でなかなかオスとメスは出会いがないだろ?だからオスはメスを見つけたら離れない様に体にくっつくんだって!」 「迷惑な野郎だな。くっついてどうすんだよ?ヒモ生活か?」 俺が適当に言うと、尚が頷く。 「種類にもよるみたいだけど~このアンコウはオスがメスに寄生して一体化して、最後にはぜーんぶ取り込まれるんだって」 「げっ!なんだそれ?!交尾してからサヨナラか」 俺がちょうちんあんこうのオスなら交尾して速攻で逃げる。 「違うみたい、交尾しないらしいよ。オスは体も脳もぜ~んぶ一体化して精巣だけをメスに提供するらしいよ。だからメスはいつでも卵産めるんだって」 「なんだその最悪な人生。楽しく気持ちよくないなら生殖行動に意味ねぇし」 「また下品なこと言うし~って、これ。将人の前世かもな」 そう言いながら尚が示した場所には食いついてまだ一体化してない別のオスが…って、ふざけんなよ!! 「んなワケねぇだろ!」 「女の子に食いつくところなんてソックリじゃん」 「バカ野郎。オレ様は女に食いつくんじゃなくて食いつかれる方だよ!」 生意気な尚の首を腕で捕まえると、ニヤッと笑って仕返しをしてやる。 「まっ、俺は食いつかれればいつでもセックスするぜ~。舌づかいは車の中でお前の指が経験しただろう?」 まさかこんな場所でセックスという単語が出てくると思っていなかったのか、それとも指への愛撫を思い出したのか。 尚はボンッと音が聞こえそうな勢いで首から上を赤くした。 ざまーみろ。笑。

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