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第29話 叫ばずにはいられない

「尚?!…っ、痛てぇなぁ…」 焦って起き上がると、節々が痛い。 狭い車内で寝るのはヤバい。 今度はちゃんとホテル予約をしておこうと誓った。 時間を確認すると朝の5時半。 どうりで眠いはずだ…いつもの目覚めより断然早い。 そして、どうでもいいが暑い。 太陽が差し込んで、車内温度は上昇している。 うっすらかいた汗が不快で、俺は取り敢えずドアを開けた。 風を僅かに感じられる。 「それにしても尚のやつ、どこ行ったんだ?またしょんべんか?」 俺は暑い車内から出て尚を探す事にした。 「尚~?尚どこだ~?」 ひたすら川に沿って歩く。 まさか、イノシシに体当たりされてどこかで倒れたりしてねぇだろうな~? どっかで迷子とかになってたらどうするよ。 見つかるかな~? なんて冗談を言っていたが、川原という開けた場所で相棒を探すのは比較的簡単だった。 車を駐車した少し先の川の浅い辺りに人影を見つけたからだ。 道路からは随分と離れているし岩と木々の陰となっていて、今近づいて行った俺の位置から僅かにしか見えない場所だ。 そんな場所で、尚が川の中に立ち、水で顔を洗っていた。 「尚、何して…、っ!!?」 そこで俺は固まった。 川に入っていた尚が急に上半身の服を脱いでそれを放り投げると、今度は下のズボンと最後にはパンツまで脱いだのだ。 はっ?!はっ?!はあぁぁぁぁぁーーーっ!!!? 何してるんだよ、お前はーーーっ?!! 俺は心の中で盛大に叫んでしまった。 いや、叫ばずにはいられなかったのだ。

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