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「……簡単なものでいい」 そして、大きく舌打ちをしてからそう答えた。稜の言う簡単なもので、というのは野菜炒めのことだ。当然、ピーマン抜きの。 学生時代、学食ではピーマンだけを別の皿に黙々と分けて無言で橙里に差し出してきた。橙里は基本的に野菜の好き嫌いはないので、喜んで食べていた。 橙里は臓器系が苦手で、もつやレバーなどがどうしても食べられない。豚足も嫌いなのだ。 「先風呂入っておけば?」 稜に向かってそう言う。返事がないのはいつものことなので、無言なのは特に気にせずに準備を進める。 あんなに無愛想でよくワインソムリエとしてやっていけるな、と思うが、実際の仕事ぶりは中々のものだったりもする。 料理にぴったりのワインを選び、あの見た目だから客からの人気もかなりある。稜目当てでレストランに来る客も少なくないのだとか。

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