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「なに間抜け面してんだよ」
「は!? だってそれは稜が……」
「俺が?」
笑うから。
そう言いかけて橙里は口を結ぶ。稜の顔は既に無表情になっていて、先ほど見せた顔ではなくなっていた。
──もうちょっと見たかったな。
「いや、なんでもない。早く入ろ」
稜の背中を押し、早く鍵を開けるように催促する。橙里も合鍵を持っているのだが、稜が開けた方がなんとなく安心する。
稜がドアを開け、ズカズカと入っていく。この男に気遣いのきの字もないことは十年以上前に知ったことだ。今更どうとも思わないが、少しだけイラッとはする。
家の中に入り、手を洗ってから早速晩御飯の準備に取り掛かる。
「なに食いたい?」
「……」
稜にそう話しかけるものの、やはり無視をされる。
こうなれば。
「じゃあピーマンの肉詰めでいい? 丁度野菜室に入ってるし」
「おいやめろ」
「じゃあなに?」
この男、苦手なものがなさそうに見えてピーマンが大嫌いなのだ。
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