17 / 527
[2]-2
専用の櫛で髪を揃えてから、カットしていく。ロングからミディアムにしたいということで、まずは目星をつけてから均等にカットをする。
すると、女性が話しかけてきたので手を止めた。
「あ、ねえ橙里さん」
「ん?」
「ここの隣にあるレストランに行ったことある?」
レストラン。ワインソムリエ。稜。
レストランという単語からすぐに稜が想像できてしまう。末期だ。
今髪を切っていたら絶対にざっくりいっていただろう。手を止めておいてよかった。
「うん、あるよ」
平然を装ってなんとかそう言う。
「そこの若いワインソムリエの人がすっごいイケメンで! 私びっくりしたんだよね。こんなイケメンいるんだ、って」
「……そっか」
「しかも、ワインが料理にぴったりなの! あんな若々しいのに三十三歳って驚いて!」
ともだちにシェアしよう!