橙里が仕事の際、稜が昼に食べやすいものを作ってくれる。パンが多いのだが、たまにちゃんとした弁当を渡される。 稜はレストラン勤務で、昼はシェフがまかないを作ってくれるのだとか。ランチタイムとディナータイムで時間帯が分けられており、稜はそのどちらにもシフトが入っている。 サーブ担当は何人かいるが、ワインソムリエは現在稜しかいない。というのも、少人数ですばやく厨房を回しているらしく、その中で稜は貴重な存在らしい。 ──ま、顔も整ってるし。 学生時代、全く夢を持っていなかった稜が仕事に就いただけですごいとは思う。 ぼーっとしていると、稜が大きい欠伸をしながらやってきた。寝癖もついていないし、顔のむくみすらない。くそ、色々恵まれすぎだ。 「……けっ」 「んだよ」 水を飲むためにキッチンにやってきた稜に、妬むようにそうやって言う。別に自分の容姿が嫌いなわけではないが、顔が整いすぎてたまに腹立つことがある。