50 / 527
[4]-6
朝からする会話ではない。
苦笑しながら料理をテーブルに運んでいく。稜は座りっぱなしだが、無駄にちょこまか動かれるより全然いい。
焼いたパンをテーブルに置いてから、橙里も腰を下ろす。橙里が座ったのを確認してから、稜が手を付け始めた。
「……稜って意外とちゃんとしてるよね」
「は?」
思ったことをそのまま言うと、稜が目を不審そうに眇める。まあ、その顔をするのも無理はないだろう。
基本的に会話は少ないが、するときはする。
今日は、そこそこ喋る方だ。
「今日は仕事何時くらいに終わんの?」
「……知らねえけど、おまえよりは早い」
「あ、そう。僕ちょっとかかるかもしれない。ギリギリにお客さん来るからさ」
「待ってるからいい」
「……」
「……どうした?」
「いや。なんで離婚間近の熟年夫婦みたいな会話になってるんだろうって……」
「……ふっ……」
「あ、笑ったな? 笑ったな?」
「……笑ってねえよ……っ、く」
「隠すなこら。おまえが笑ってるとこなんてSSRレアくらい珍しいんだからな」
橙里は、稜のツボがいまいちわかっていなかったりする。この間は橙里が意識せずに放った「癒されてぇ」という言葉に反応したりしていた。
ともだちにシェアしよう!