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「んー肩痛い」
「腰は?」
「いや、特に。腰が痛くなることはほとんどないなー。意外と強いから、僕」
「じゃあ、突っ込んでも平気だな」
「んぐっ」
話がころころと変わっていくのはよくあることだが、話が変わりすぎて焦ってしまう。
──つ、突っ込むって誰のなにをどこに突っ込むんだ!
男として、そういう類の話の深い意味がわからないというのはかなり痛い。その痛い気持ちをしてでも、意味を理解したくないものだ。
「やだ、稜さんえっち」
「男だしな」
「嫌じゃないの? 稜は」
トーストに齧り付きながらそうやって訊く。林檎の爽やかな風味が口中に広がり、優しい味がする。
だが、稜の顔はそれに勝るくらい優しく、不気味に微笑んでいた。
「おまえ次第だな。おまえが嫌じゃないなら嫌じゃない」
「僕が拒否すれば稜さんは僕のことを抱かない?」
「まあ、そうなるな。おまえが拒否できれば、の話だけど」
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