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「こんばんはー」 営業時間が終わる三十分前に、女子高校生とその親がやってきた。中途半端な長さになってしまったため、ボブにしたいと言って来てくれた。 「こんばんはー」 「当美容室は初めてだよね? 僕のこと指名してくれてありがとうございます」 「電話したときに勧められて、美人だって聞いたんですけど本当に綺麗ですね!」 「ありがとう。じゃあ、シャンプーしに行こうか」 戸園にシャンプーをしてもらい、その間に準備を進めていく。雑誌を置いたり、ヘアアイロンの大きさを選んだり。 高校生なら、内巻きの方がかわいいかもしれない。 本人がどのくらいの長さを希望するのか、親に聞きに行くことにした。 「すみません。お聞きしたいことがあるんですけど、いいですかね」 「あっ、はいはい! なんでしょう!」 「ご本人がどのくらいの長さを希望しているのかわかりますか?」 愛想がいい笑顔を浮かべながら話せば、女は大体喜ぶ。これは稜の無愛想ぶりを見て学んだことだった。

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