56 / 527
[4]-12
「こんばんはー」
営業時間が終わる三十分前に、女子高校生とその親がやってきた。中途半端な長さになってしまったため、ボブにしたいと言って来てくれた。
「こんばんはー」
「当美容室は初めてだよね? 僕のこと指名してくれてありがとうございます」
「電話したときに勧められて、美人だって聞いたんですけど本当に綺麗ですね!」
「ありがとう。じゃあ、シャンプーしに行こうか」
戸園にシャンプーをしてもらい、その間に準備を進めていく。雑誌を置いたり、ヘアアイロンの大きさを選んだり。
高校生なら、内巻きの方がかわいいかもしれない。
本人がどのくらいの長さを希望するのか、親に聞きに行くことにした。
「すみません。お聞きしたいことがあるんですけど、いいですかね」
「あっ、はいはい! なんでしょう!」
「ご本人がどのくらいの長さを希望しているのかわかりますか?」
愛想がいい笑顔を浮かべながら話せば、女は大体喜ぶ。これは稜の無愛想ぶりを見て学んだことだった。
ともだちにシェアしよう!