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「……ってことがあったんだよ」
それから数日後。定休日の為、羽村と戸園で遊んでいた。
中々値の張る店で昼食を取っている際、橙里は昨日あったことを話した。昨日は指名がなかったので裏で事務作業をしていたが、昨日髪を切っていたら間違いなく失敗していただろう。
「……え、それだけ?」
「それだけって……え? 稜が僕の名前を言ったんだぞ?」
「逆に一回も言われたことなかったんですか?」
「……ん?」
二人ともわけがわからない、というように目をぱちぱちとさせている。橙里もつられてぱちぱちさせていると、羽村が少しだけ声をあげて笑った。
「ももちゃんは面白いね。そんなに幼馴染との出来事を話したいんだ?」
「嬉しそうに言いますね。見てて嬉しくなりますけど、ちょーっと違和感あるっていうか」
「……違和感? えっ?」
二人が言っていることがよくわからない。
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