123 / 527
[8]-4
羽村が笑い、それにつられて微笑んでいると少しだけ羽村が真面目な顔を作った。
「……ももちゃんはさ」
「ん?」
「気持ち悪いと思わないの? 男同士で、なんて……」
いつも笑っている羽村が不安そうに目を泳がせた。その姿がいつもと違って気を遣わなければいけないと思ったわけでもないが、素直に告げる。
「思わないよ。だって、羽村さんもおかしいって思いながらも好きになっちゃったんだろ? だったら仕方ないと思うよ」
「……ももちゃん」
「それに、お似合いだし」
羽村が男しか好きになれないと知っても、嫌うことだけは絶対にしない。
そう思いながら言うと、羽村にも伝わったらしい。
「ももちゃんって優しいよね。絶対嫌われると思ったから言わなかったのに」
「嫌わないよ。僕ってそんな風に見える?」
「ううん、見えない。ももちゃんが好かれる理由がわかったよー」
年上なのに全く気兼ねせずに接することができるのは橙里の人を嫌わない性格が理由でもあったが、羽村がいい所だけを見せようとしない性格のおかげでもあった。
誠実で嘘が付けなくて、戸園のことが好き。
橙里は、そんな年上の羽村のことを誇りに思うし尊敬している。
ともだちにシェアしよう!