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「そういえば、蒼樹が俺の髪質好きって言ってくれたのもこの時期だったな」 「……」 そうやって言う羽村の顔が優しく微笑んでいて、橙里はちょっとした違和感を覚えた。 もしかして、羽村は蒼樹のことを。 「……羽村さん」 「うん?」 「応援してるからね」 なにを、とは言わないで背中をぽんと叩くと、羽村が破顔した。 「えへへ、ありがと。やっぱももちゃんには敵わないなぁー」 「蒼樹はどうなの?」 「わかんない。でも、カノジョはいないはずだよ」 男同士だからとか、そんなことは関係なしに羽村は戸園のことを好きなんだと思う。性別を超えて、好きになってしまったんだろう。 「何歳差? 今蒼樹が二十九だから……」 「俺が三十五でしょ。六歳差くらいじゃん?」 「すげえ。早く射止めちゃってよ。そしたら赤飯炊いてあげるから」 「あはは、ありがと。赤飯そんなに好きじゃないんだけどなー」

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