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「……ふーん。だから出勤すんのか」
「そうなんだよー。くっそぉ、今日はたっぷり寝るつもりだったのに……」
美容室に向かう途中、稜と肩を並べて歩く。稜の定休日は橙里とは違うので、いつもは稜一人で行っている。
昨日あったことを話すと、珍しいことに稜が反応を示した。
「頑張れよ。夕飯はおまえが好きなの作ってやるから」
「頑張るよ。ありがと」
稜の優しさが滲み出ている言葉だ。
稜の肩に頭をこつんとぶつけると、なんとなく頑張れそうな気がした。
「やべえ入りたくねえ……」
美容室の前まで来て、入りたくなくて立ち止まると、稜に背中を押された。
「入れよ。瀬島って奴もいるんだろ」
「稜も入ろ?」
「絶対に入らねえ」
くちびるを尖らせ、意を決して美容室の方に歩き出す。稜に手を振ると、稜がふっと笑って手を軽く上げる。その姿がかなり男前で、かっこよかった。
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