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「……この人は何歳?」
「三十五」
「ええ……金髪なのに?」
「おい。金髪と年齢は関係ないだろ」
「いや、まあまあ関係してると思う。もうちょっと落ち着いた色の髪の毛にすれば?」
「だってこれオレのアイデンティティだし」
「は?」
瀬島と橙里の、意味がわからない会話を矢本が呆然と見つめている。
きっと、橙里がタメ口なのも瀬島が三十五歳なのも驚きなのだろう。
「もうわかんないんだけど……どうなってんの、ここ」
「ごく普通の美容室」
「あんたが言うか」
矢本が笑った。瀬島と橙里の会話が面白いらしく、腹を抱えている。笑ったらかなり印象がいいのに、どうして普段から愛想よく接しないのだろうかと思う。
無愛想でも愛想がよくてもかっこいいことに変わりはないのだが。
「じゃあ、矢本くん。ここの美容室の雰囲気は大体わかったかな?」
「うん。イケメンだらけでやばいとこだっていうのがわかった。羽村さんと戸園さんもどうせかっこいいんでしょ」
「すげ、名前を覚えてる」
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