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「……待って。俺と十歳くらい違うじゃん」
「そうだな」
「うわー……完全に見た目だけで決めてたわ」
自分の最初の失態に、矢本はかなりショックを受けているようだ。プライドが高いタイプだと思っていたが、自分が悪いことは悪いと素直に認めるらしい。
益々稜に似ていると思うが、稜の方がマシだと思う。それだけは絶対に譲らない。
「反省したか」
「……した」
「ならよろしい。おまえが僕に勝てるとこなんて身長だけだからな? 覚えとけ」
「あんたさ、小さいわけじゃないのに自分よりデカい男嫌いだろ」
別にそういうわけではないがそういうことなのだろう。
矢本と話してみて思ったのが、案外悪い奴ではないのかもしれない。
矢本にもう一つ訊きたいことがあったので口を開こうとすると、瀬島がやって来た。
「ももちゃーん大丈夫?」
「なにが?」
「いや、口論してると思って来たんだけど……喧嘩してない? 大丈夫?」
瀬島の心配ぶりに、苦笑してしまう。余程橙里と矢本のやり取りを見て心配したんだろう。
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