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「……誰か来た」
ずっと作業をしていると、気付けば外は暗くなっていた。
矢本がそう呟き、稜が来たんだと思ったのでバッグを手に取る。瀬島もついて来て、稜の機嫌が悪くなると思いながら出入り口に向かう。
やはり稜が入ってきて、橙里の後ろに目を向けるとすぐに不機嫌顔を作った。
矢本もやって来て、稜の顔を見て明らかに驚いている。そのくらい稜の顔は整いすぎていて、橙里はもう見慣れてしまったが初見だと二度見は絶対にしてしまうと思う。
稜の顔を見ると、矢本のことを見て納得しているようだった。
「……待って。この人がそうなの?」
矢本が橙里にそう聞いてきた。橙里は自慢するように鼻で笑ってから稜の背中を押した。
「そうだよ。ホモかどうかなんてわかんねーだろ?」
にかっと笑いながら言うと、矢本が「あー……」というような顔を作った。それを見届けてから扉を開け、外に出ていく。
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