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外に出た瞬間、冷たい空気が身体を包んでくる。いつもは嫌なその感覚が、火照った身体を冷やしていくようだった。
「はー……つっかれたー……」
歩きながら稜の肩に頭を乗せると、稜が頭を掴んできた。そのまま振り払われるかと思えば、優しい力で撫でてきた。
そのまま髪を掬われ、さらさらと触っていく。
その感覚がなんだか新鮮だった。
「なに? 慰めてくれるの?」
「別に。目の前に髪があったから」
「変な髪の色でしょ。黒髪に染めようかな……」
「変じゃねえと思うけど。おまえらしくて」
その言い方が今の橙里にとってはかなりありがたくて、橙里は何故か急に稜に甘えたくなった。
橙里は、稜の腕を引っ張って早歩きをする。稜が素直について来た。
「なんだよ」
「早くしよ。早く……」
──稜に甘えたい。
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