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家に着いてすぐ、橙里は稜にぶつかるように抱きついた。 ほんのりアルコールの匂いがする稜は、安らぎをくれたような気がした。 「はぁー……」 「おまえ、どうした? そんなに疲れたのか」 稜が抱きしめ返してくるということはしないが、自分が稜に抱きついているという事実だけで安心する。 厚い胸板に顔を埋め、そのままの状態で静止していると、稜が再度頭を撫でてきた。 「稜……」 「どうした」 「あったかいね」 その温かさが今は心に沁みる。素直に温かいと告げると、稜が急に黙ってしまった。 そのまま顎を掬い取られ、頬に優しいキスをされた。 ちゅっと音を立てながら段々くちびるの方に近付いてくる。橙里が顔を上げると、くちびるに稜のそれが触れた。

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