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「嘘でしょ。あんなにモテてた稜が? 結婚するつもりない? オンナが聞いたら発狂するだろうよ……」 「そんなことでは狂わねえだろ。そもそも、周りの奴らは大体結婚してる」 「あ、確かに。そういやこの前も披露宴のスピーチ頼まれたわ。俺らだけじゃね? 結婚してないの」 「……まあ」 三十を超えると、さすがに焦る人間も増えるのかもしれない。でも、親に孫は期待するなと言ったのは事実だった。 そこまでして結婚する意味がわからないし、今好きだとしてもこれから先何年も十何年も、何十年も一緒にいるなんて耐えられないと思ったからだ。 その為、橙里との同居を許可したのも結婚したいとせがんでくる女を牽制する為のようなものだった。 ──まあ、あいつの場合はそれだけではないけど。 「でも橙里は絶対結婚すると思ってた。あんなに女に囲まれてて結婚しないっていうのも不思議な話だよなあ」 「……そうだな」 「稜なんか聞いてないの? あいつが結婚しない理由とか」

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