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『っ……はいっ……』 「と……」 声がかなりかれていて、辛そうな声が聞こえた。思わず名前を呼びそうになり、なんとか堪える。 ──今呼ぶべきではない。 だが、橙里は稜のたった一文字の声で誰だかわかったらしく、濁流が流れるように感情を爆発させていた。 『あっ……稜? 稜だよね!?』 「ああ……そうだ。悪い、携帯の電源が切れてた」 『よかった……繋がったぁ……!』 受話器の向こうで、安堵したように声を漏らしている。若干鼻声になっており、ずっと泣いていたことがすぐにわかった。 橙里が弱っているときに自分に縋るように泣きついてくるところが最高にかわいい。こういうときに思ってしまうのは本当に最低だと思うが、それほどにかわいいのだ。 「今すぐ行くから。あと数十分したら絶対に着く」 『っ……着いたら、抱きしめてくれる?』 「は?」 『寒いっ……ねえ、りょお、早く来てよ……』

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