325 / 527
[17]-25
「……どうも」
マンションの前で止まってもらい、急いで車から出た。外は小雨で、冷たい雨が顔に降りかかる。
身体が濡れていると、きっと橙里を抱きしめたときに橙里が濡れてしまう。そう思ったので、稜は中に入ってからすぐにコートを脱いだ。
エレベーターに乗り、早く着けと心の中で何度も繰り返す。
この時間がやけに長い気がして、稜は耐えきれずに舌打ちした。その音が密閉された空間に響き渡り、虚しく消えていった。
時間にしては数十秒だが、何故か何分も乗ったような錯覚に陥った。稜は手で開きかけたドアを無理やり開け、とにかく早く歩いていく。
鍵を取り出し、鍵穴に差し込んだ。回した途端開くような音が聞こえ、稜は力を込めて玄関のドアを開けた。
ともだちにシェアしよう!