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「……どうも」 マンションの前で止まってもらい、急いで車から出た。外は小雨で、冷たい雨が顔に降りかかる。 身体が濡れていると、きっと橙里を抱きしめたときに橙里が濡れてしまう。そう思ったので、稜は中に入ってからすぐにコートを脱いだ。 エレベーターに乗り、早く着けと心の中で何度も繰り返す。 この時間がやけに長い気がして、稜は耐えきれずに舌打ちした。その音が密閉された空間に響き渡り、虚しく消えていった。 時間にしては数十秒だが、何故か何分も乗ったような錯覚に陥った。稜は手で開きかけたドアを無理やり開け、とにかく早く歩いていく。 鍵を取り出し、鍵穴に差し込んだ。回した途端開くような音が聞こえ、稜は力を込めて玄関のドアを開けた。

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