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「っ……!」
ドアを開けると、玄関に橙里が蹲っていた。分厚い毛布を身体に巻き付け、その暑さで額に汗をびっしょりとかいている。その身体はかたかたと震えていて、目からは幾筋もの涙が溢れていた。
稜は、そんな橙里を強く強く抱きしめた。抱きしめたら橙里が嗚咽するように呼吸をした。
稜の背中にがっしりとしがみつき、声を出して橙里が泣く。
その様子を見て、稜は思わず言ってしまった。
「……おまえ、俺がいなかったときどうやって生きてたんだよ」
その言葉に対する返答はない。そう思ったのだが、橙里がかなり小さい声で呟いた。
「……ずっと……稜に会いたかったよ……」
「……」
か細く、力なく橙里が言う。
なあ、橙里。そんなことを言われて、なにも反応しない男がいると思うのか。そして、思う。
──おまえも、俺なしじゃ生きられねえじゃねえか。
そう稜は心の中で小さく呟いた。
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