326 / 527

[17]-26

「っ……!」 ドアを開けると、玄関に橙里が蹲っていた。分厚い毛布を身体に巻き付け、その暑さで額に汗をびっしょりとかいている。その身体はかたかたと震えていて、目からは幾筋もの涙が溢れていた。 稜は、そんな橙里を強く強く抱きしめた。抱きしめたら橙里が嗚咽するように呼吸をした。 稜の背中にがっしりとしがみつき、声を出して橙里が泣く。 その様子を見て、稜は思わず言ってしまった。 「……おまえ、俺がいなかったときどうやって生きてたんだよ」 その言葉に対する返答はない。そう思ったのだが、橙里がかなり小さい声で呟いた。 「……ずっと……稜に会いたかったよ……」 「……」 か細く、力なく橙里が言う。 なあ、橙里。そんなことを言われて、なにも反応しない男がいると思うのか。そして、思う。 ──おまえも、俺なしじゃ生きられねえじゃねえか。 そう稜は心の中で小さく呟いた。

ともだちにシェアしよう!