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「……やっちまった……」 すっかり熱が下がり久しぶりに出勤したのだが、橙里は美容室にあるカウンターに橙里は項垂れた。 熱を出すと自分でも制御出来なくなる。その為自分が思っていることを素直に口に出してしまうのだが。 ──まさか、本心が出るとは思わなかった。 ずっと稜に会いたいと思っていた。でも、それが叶わずにいて諦めかけたときに再会することができたのだ、嬉しくないはずがない。 その気持ちを稜に向かって言うつもりではなかったのだが、口が思わぬところで滑ってしまった。 我ながら大馬鹿だ。 「あら、ももちゃんどうしたのぉ?」 「……幹さん」 気が付けばすぐ後ろに幹が立っていて、項垂れていた橙里を心配するように声をかけてきた。 「いや……大丈夫だよ」 「大丈夫じゃないでしょうよー! 人生の先輩であるアタシに相談してごらんなさい!」

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