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恐らく、まだ一線は超えてない。でもこの様子では時間の問題だろう。それ以前に瀬島が矢本に靡きつつある。 もしかしたらこの美容室に二組のカップルが出来るのかもしれない。 ……いや、待てよ。そうしたら残るのは幹と橙里だけになり、自動的にくっついてしまうことになるということも…… ないな。それだけは絶対にないと信じたい。 なんてことを頭で悶々と考えていると瀬島が話しかけてきた。 「……でも、ももちゃんのことは諦めてないから。いつでもオレのところに来てね?」 「矢本の方が大事にしてくれると思うんだけどね……」 「あれ? 今オレ振られた?」 冗談めいた言い方で瀬島が言い、それが面白くて声を上げて笑った。橙里の笑い方に瀬島もつられて笑い、大の大人二人が笑い合う様子は滑稽だろう。それでも、瀬島のことを少しだけ知れて嬉しかった。

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