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「今日って早く終わる日?」 「そうだよ。だからもう閉めちゃう」 日が傾いてきた頃、外の様子を見た瀬島が看板を『OPEN』から『CLOSE』に返した。 この美容室は、一ヶ月に一度だけ早く終わる日がある。当然幹の計らいで、一ヶ月に一度くらいは早く終わらせようと数年前に決まったことだった。 しかし、早く終わってしまうと稜と一緒に帰れなくなる。さて、どうするか。 「あ、そうだ。せっかくだしさ、あの優待券使って稜くんとこのレストラン行かない?」 「え」 「お、ええですね。桐野さんには申し訳ないんですけど、時間もありますし。予約もいらないんですよね? 確か」 え、待て待て。 これは行く流れなのか? 行くのは二回目になるが、今ソムリエ姿の稜を見るとぽろっとなにかを言ってしまうかもしれない。 なんとか言い訳を考えていると、矢本が口を開けた。 「あの人って……もしかしてそこで働いてんの? 行きたい」 「やっ……」 矢本。そこは空気を読んで面倒臭いとか言ってくれ。

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