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全員が早々に準備を始め、これはもう行くしかないと思い息を吐いてからバッグを取りに向かった。
まあ、久しぶりに美味しいご飯が食べられるしいいか。いや、別に稜が作るご飯が不味いというわけではないが。
「……まだ好きなの?」
ドアを開けようとすると、やや苛立った様子の矢本の声が聞こえてきた。デジャブ。
きっと、瀬島に向かって話しかけているのだろうが瀬島の声はしない。どうしてドアを開けようとしたらこうも人がいるのだろうか。甚だ疑問だ。
「……そんなの、樹に関係ある? 聞いてどうするの」
「関係ないけど。百川さんはどうせ稜さんのことが好きなんでしょ?」
「……」
瀬島がすっかり黙ってしまった。入るなら今しかないだろうと思い音を立てないようにドアを開けると、衝撃の光景が目に飛び込んでくる。
矢本が瀬島のことを抱きしめ、瀬島が身動き取れない状況になっていた。それは男同士で抱き合っている異様な光景なのに、不思議と違和感はない。それは、矢本が放つオーラが厭らしくないからだろうか。
「俺だったら、瀬島さんのこと傷つけないよ」
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