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第31話
「えーと、あの?」
きょとりとする俺に、日比谷先輩が笑顔で説明してくれる。
「あ、驚かせて御免ね。でも心配しないで。彼らは皆味方だから」
「味方、ですか?」
「うん。今回の事で、高松君が狙われてるってことを話したら力になってくれるって。生徒会のメンバーなんだ。圭の友人でもあるから安心していいよ」
成程、この容姿で生徒会のメンバー。
実に美味しい設定だな。
なんて思っていると、そのうちの一人がすっと俺の前に出てくる。
あれ、この人って確か俺と一度ぶつかった人だ。
相変わらず綺麗な容姿してるな、なんて思わず見惚れていると超絶美人は口を開いた。
「高松 悠斗君だね」
「はい」
「俺は、水嶋 由貴 。生徒会副会長をしている。宜しく」
「あ、はい。宜しくお願いします」
「今回の事、本当にすまなかった。君を危険な目に合わせてしまって」
「え?いえ、そんな!水嶋先輩達のせいじゃないですから…!」
「けれど、生徒達を護ることが生徒会の務めであると会長は考えていてね。俺達も同じ考えだ。一人でも身の危険を感じつつ学園生活を送ってほしくはないからね」
「身の危険…俺が狙われてるって言うのは本当なんですか?ただの偶然じゃなくて?」
バイクの事もたまたま側にいたのが俺だっただけじゃないんだろうかと思って告げると。
「てめぇは、まだんなこと言ってんのかよ!?」
と、矢谷先輩に怒られてしまった。
「矢谷、落ち着いて。けれど、詳しい状況を見ていた生徒たちに聞く限り、バイクは君の姿を見てから走り寄ってきたのは間違いないらしい。その前に植木鉢が落とされた件でも、調べてみたところ君のクラスメートから聞いた話によると、昼休みに君に頼まれて忘れた財布を取りに来たという生徒がいたらしいんだ。どこのクラスかはわからなかったらしいけれどね」
「そうですか…」
勿論、俺が誰かに頼んだ覚えはない。
というか、俺が本当に狙われているとして、何かした心当たりがない。
何か恨まれるようなことしたかな?俺?
そう考えて、ふいに矢谷先輩の方へと視線を向けると。
「あ」
ふと、あることに思い当たる。
俺が矢谷先輩と知り合うきっかけになった出来事を思い出していた。
「何か思い当たることがあったのかい?」
「新聞部…」
「新聞部?」
「友人のためにちょっと記事を書くのを邪魔したことがあるというか」
正確には写真のフィルムを廃棄したんだけれど。
俺の言葉に反応したのは日比谷先輩だった。
「それなら、真っ先に当たったよ。矢谷が」
「おい、日比谷!」
「え?そうなんですか?」
「うん。一旦学校に戻ってきてからすごい剣幕でね。新聞部の皆震え上がってたよねぇ」
くすくすと笑って話してくれる日比谷先輩に矢谷先輩は突っかかっていく。
「てめぇは、また余計なことを…!」
「えー?だって本当の事じゃないか。でも、僕が見る限り彼らは白だよ。自分達の手を下してどうこうできるほどの度胸がありそうには見えないからね。ましてや、誰かを命の危険にさらすなんて出来そうにもない小物だよ」
「まぁ、その点は日比谷に同意だな」
日比谷先輩の言葉に矢谷先輩も頷く。
二人がそう言うならそうなのだろうと俺も考える。
確かにあの新聞部のモブ1君、根は小心者のようだったしな。
「そうか、ならほかに心当たりはないかい?」
水嶋先輩の言葉に俺は軽く首を傾げる。
心当たり、心当たり、か。
「そう言えば。心当たりと言うほどのものじゃないんですけれど」
「何かあるのかい?」
「視線を感じることが」
「視線?」
「はい、これまで二回ほど視線を感じて誰かに見られている気がするんですけれど、振り返ってもだれもいないって言う」
「視線か…」
「すみません。これじゃあ、何の手掛かりにもなりませんよね」
「いや、その視線の主が何かに関係している可能性はあるからね。重要な情報だよ」
「そうですか?なら良かったです」
「とりあえずしばらくは、誰かが二人ほど高松君についていることにした方がいいな」
水嶋先輩が告げると、日比谷先輩達が頷く。
「それなら僕達が登下校時は一緒にいるようにするから大丈夫だよ」
「え?でも日比谷先輩には部活があるじゃないですか」
「先生に事情を話して少し遅れて参加させてもらうから大丈夫。圭の方も大丈夫だよね?水嶋」
「ああ、久瀬川にはもともと生徒会からの要因としてついていてもらうつもりでいたしな」
「後は矢谷がいるからね」
「え?」
日比谷先輩の言葉に俺は矢谷先輩へと視線を向ける。
「んだよ?」
「いや、ご迷惑じゃないかと思って」
「別に。俺はこんなふざけた手を使うやつが嫌いなんだよ。そいつを突き止めるためなら協力してやる」
「そうですか。有り難うございます。矢谷先輩がいてくれるなら心強いです」
そっぽを向きながら告げる矢谷先輩の言葉に納得しながらも、矢谷先輩と一緒にいられる時間が増えるのは嬉しかったので俺は笑顔で礼を告げる。
そんな俺達を見て、日比谷先輩が小さく。
「素直じゃないなぁ」
なんて言葉を零していたんだけれど。
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