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三都幻妖夜話(3)神戸編 24-48 トオル | 椎堂かおるの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
三都幻妖夜話(3)神戸編
24-48 トオル
作者:
椎堂かおる
ビューワー設定
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24-48 トオル
横目
(
よこめ
)
にお
互
(
たが
)
い目が合って、アキちゃんはもう死ぬみたいな顔をした。 そして鳥をなんとか
引
(
ひ
)
き
剥
(
は
)
がそうとしてたけど、
寛太
(
かんた
)
はよっぽど
美味
(
うま
)
いのか、
未
(
いま
)
だにガツガツ
食
(
く
)
ろうてて、キスをやめへん。 俺はそれを、どんなジト目で見てたんやろか。
瑞希
(
みずき
)
ちゃんはもう、よっぽどつらい気分なんか、ソファの
端
(
はし
)
っこで頭
抱
(
かか
)
えて、ちっさくなってた。
可哀想
(
かわいそう
)
になあ犬。こんなん今後、
日常茶飯事
(
にちじょうさはんじ
)
やで。
本間
(
ほんま
)
先輩
(
せんぱい
)
と付き
合
(
お
)
うていくんやったらな! 「なんとかなってきたか、アキちゃん」
試
(
ため
)
しに
腕
(
うで
)
に
触
(
さわ
)
ってみると、
平熱
(
へいねつ
)
みたいやった。お熱さがって、よかったでちゅね。とっととその、お熱い鳥を
蹴
(
け
)
り
落
(
お
)
とせ!
寛太
(
かんた
)
はだらだら
汗
(
あせ
)
をかいてた。まるで一発やった後みたい。 なんとかなったと
頷
(
うなず
)
いて、青い顔したアキちゃんは、なんとか
寛太
(
かんた
)
の顔を
押
(
お
)
し
返
(
かえ
)
していた。 「なんでやめんの……?」 ぼんやり
甘
(
あま
)
い、熱い声して、
寛太
(
かんた
)
は
睦言
(
むつごと
)
みたいにアキちゃんに聞いた。 なんでなんか
忘
(
わす
)
れたか。お前はほんまにアホやなあ。 「な、なにこれ? なんでこんなことに……」 俺のせいかとビビってる声で、アキちゃんはたぶん、俺に
訊
(
き
)
いてた。場合によっては、
土下座
(
どげざ
)
して
詫
(
わ
)
びそうなビビりかたやった。 そうか。お前も
一応
(
いちおう
)
、俺に悪いとは思ってんのや。 そうなんやなあ。知らんかったわ。勉強なったよ。 「お前が
溶
(
と
)
けそうなってたから、
溢
(
あふ
)
れた
霊力
(
れいりょく
)
抜
(
ぬき
)
かなヤバイということで、鳥さんに食うてもろてただけや」 「く、食うって……?」 ソファで
腕組
(
うでぐ
)
みしている
真顔
(
まがお
)
の俺の
横顔
(
よこがお
)
を、アキちゃんはじいっと
怯
(
おび
)
えて見ていた。いつ
亨
(
とおる
)
は
大蛇
(
おろち
)
に
変転
(
へんてん
)
するやろかと、
内心
(
ないしん
)
では
秒読
(
びょうよ
)
みしてる、そんな顔。 「キスしただけや。
人工
(
じんこう
)
呼吸
(
こきゅう
)
みたいなもん。血
吸
(
す
)
うのと同じようなもんやろ。鳥さんは血
吸
(
す
)
われへんのん?」 まだアキちゃんのお
膝
(
ひざ
)
でぼけっとしている、
満腹
(
まんぷく
)
満腹
(
まんぷく
)
みたいなぼんやり顔の
寛太
(
かんた
)
に、俺は
訊
(
たず
)
ねた。
寝乱
(
ねみだ
)
れたような
髪
(
かみ
)
が、
汗
(
あせ
)
で
張
(
は
)
り
付
(
つ
)
いていて、めちゃくちゃエロい。 そうか
信太
(
しんた
)
は
朧
(
おぼろ
)
様の、この部分は好きやったんか。 気の毒やなあ、てめえの
萌
(
も
)
えツボが
誰
(
だれ
)
の目にもバレバレで。バリバリつらいよな、
信太
(
しんた
)
。
恥
(
は
)
ずかしい
恥
(
は
)
ずかしい。 「血なんか
吸
(
す
)
うたことない。そんなんしたらあかんて
兄貴
(
あにき
)
が言うてた。
血肉
(
ちにく
)
食うたら
穢
(
けが
)
れてまうやろ?」 「そうかなあ。
美味
(
うま
)
いで、血も。お前が
吸
(
す
)
うてんのと、どっちが
美味
(
うま
)
いんか、俺は知らんけど」 「
霊水
(
れいすい
)
?」
煙
(
けむ
)
る
瞳
(
ひとみ
)
で
瞬
(
またた
)
いて、
寛太
(
かんた
)
は不思議そうに言うた。
誰
(
だれ
)
でもやれると思うてたらしい。 そんなもんがあるって、俺は知らんかったしな、どうやって
吸
(
す
)
うたり
吸
(
す
)
わせたりしてんのか、
見当
(
けんとう
)
つかへん。 たぶん
信太
(
しんた
)
由来の
習慣
(
しゅうかん
)
やないか。鳥さん育てる目的で、
信太
(
しんた
)
がやってんのを見て、
他
(
ほか
)
にも広まったんやろう。 練習したらできるんかな。俺にもできんのかな。と、いうか、アキちゃんにもできるんかな。そして、それは、
口移
(
くちうつ
)
ししかありえへんようなモンなんか。 「
霊水
(
れいすい
)
も
美味
(
うま
)
いし、力はつくけど……でも、つまらへん」 「つまらへん?」 ぼけっと熱あるみたいな、ぼんやり
上気
(
じょうき
)
した顔で言う
寛太
(
かんた
)
の目付きは、なんともいえずエロくさい。 「つまらへんよ。エロのほうがええよ。気持ちええしな、それに、幸せやもん」 「それは単にお前がエロが好きなだけちゃうん?」 俺が
指摘
(
してき
)
してやると、鳥さんは
悩
(
なや
)
んだみたいやった。 そして、いったいいつまでお前はアキちゃんのお
膝
(
ひざ
)
に
跨
(
またが
)
っているつもりなんか。鳥は
綺麗
(
きれい
)
な指した白い手で、何の気無いふうな
無意識
(
むいしき
)
の仕草で、やんわりとアキちゃんの
首筋
(
くびすじ
)
から
胸
(
むね
)
のあたりを
撫
(
な
)
でた。 アキちゃん、
顔面
(
がんめん
)
蒼白
(
そうはく
)
になっていた。たぶん
萌
(
も
)
えたんやろう。軽く
誘
(
さそ
)
われてるよな。
愛撫
(
あいぶ
)
チックやったよな。俺もそう思う。 「好きやけど。好きやったら、あかん?」 「あかんことない。俺の男とやるんでなければ」 俺が
念
(
ねん
)
のためキッパリ言うてやったところ、
寛太
(
かんた
)
はちろりと
視線
(
しせん
)
を
戻
(
もど
)
して、自分を見上げて軽くあわあわしているアキちゃんを、
伏
(
ふ
)
し
目
(
め
)
にじっと見下ろした。 「
本間
(
ほんま
)
先生と……?」
検討
(
けんとう
)
中、みたいに、鳥は静かにそう言うて、しばらく
静止
(
せいし
)
して考えていた。 そして、フッ、と
薄
(
うす
)
く笑った。なんかちょっと、
邪悪
(
じゃあく
)
な
微笑
(
ほほえみ
)
やった。 そうすると
寛太
(
かんた
)
は必要以上に
朧
(
おぼろ
)
に
似
(
に
)
ていた。
要
(
い
)
らんとこまで
似
(
に
)
てきたらしいで。
大丈夫
(
だいじょうぶ
)
かな
虎
(
とら
)
。これでも
萌
(
も
)
えるか。
邪悪
(
じゃあく
)
なの
嫌
(
いや
)
やて言うて、
箱入
(
はこい
)
りで育ててきた鳥さんやのに。
結局
(
けっきょく
)
こんなんなってもうてなあ。 「それはないわ。俺、
亨
(
とおる
)
ちゃん好きやし、
蛇
(
へび
)
と
喧嘩
(
けんか
)
したないしなあ。それに……」 言いかけてから
寛太
(
かんた
)
は、くうっ、と
辛抱
(
しんぼう
)
たまらんみたいな思い出し笑いの顔になった。 「それに俺は
兄貴
(
あにき
)
がええわ。先生どんなんか知らんけど、どうでもええから。
虎
(
とら
)
プレイに
優
(
まさ
)
るもんはないから。お前もいっぺん
兄貴
(
あにき
)
とやってみればわかるよ。やったら殺すけど」 うんうん、て俺は
頷
(
うなず
)
いといた。 お前もとうとうそう思えるようになったんか、
寛太
(
かんた
)
。
立派
(
りっぱ
)
になって。よかったなあ、
真
(
まこと
)
の愛に目覚めることができて。 お前も今後どんだけ、「もう殺さなあかん」て思うことかやで。 それとも
虎
(
とら
)
は案外、
浮気
(
うわき
)
せえへんのかなあ。
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椎堂かおる
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