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30-65 トオル
アキちゃんと亨 、皆 さんに約束 します。
大崎 先生が俺らに代 わり、宣誓文 の祝詞 を唱 えてくれた。
それを神も人も、月読 も聞いている。
誓 います、今ここに。
俺は俺のツレだけを見て、このツレだけを愛し、病 める時も健 やかなる時も、たとえ死んでもうて、また蘇 り、またうっかり死んで、生まれ変わったり、記憶 喪失 とかなってもうたり、人間やのうなってもうて、あの世とかその世とか、どの世にいっても、タイムスリップしても、宇宙 の彼方 のどこか遠くの銀河系 に行ってもうても、決してツレを見捨 てず、愛 し、なるべく浮気 はせず、うっかりやってもうたら土下座 して謝 り、一遍二遍 はドツき殺 されても文句 は言わず、いつも仲良 うし、家族や仲間 を慈 しみ、天地(あめつち)に朝 な夕 なに感謝 して、好き嫌 いは言わず、西に悪い鬼 がいると聞いたら、飛んでいってこれを退治 し、東に気 の毒 な物 の怪 がいると聞けば、すぐ行ってこれを助け、神様、仏様、皆々様 のご指導 ご鞭撻 をありがたく仰 ぎつつ、三都 の、そして日ノ本 の安寧 のために、粉骨砕身 、全身全霊 を賭 けた戦いに、全生涯 を捧 げることを誓 います!
って、ちょい待て大崎 茂 !
これ結婚 の誓 いやなくないか⁉︎
これ、途中 から霊振会 の会長 の就任 演説 になってもうてるやんか!
俺らの結婚式 はどこにいったんや⁉︎
消えた……。宇宙 の彼方 に。
それか、実 はこれが元々 、俺にとってはアキちゃんと結婚 するということやったんかもしれへんわ。
俺のツレは巫覡 の王様。
三都 の安寧 を守る責務 を負 ってんのやって。
それと永遠 に離 れへん強い絆 で結 ばれたなら、俺かて東奔西走 、鬼 をぶった斬 り、気 の毒 な物 の怪 を助けてやって餌 やらなあかんようになんのや。
天晴 れ、さすがは秋津 の坊 と、会場 は沸 きに沸 いた。
大フィーバーやった。
イエーイ、俺らの王様やああ! みたいになり、ウェーイ酒飲もうぜええ、ってなって、もう、何が何やら。どこが上やら下やら。朝か夜かも分からんような、酔 っ払 うた式 や巫覡 の術法 飛 び交 う大宴会 に。
ええな! 酔っ払 え、皆 !
日頃 の憂 さは忘 れて、パーティーや!
うまい飯 も酒もあるしな。俺にも酒持ってこい! 樽 ごと飲んだるで!
酔 っ払 うて歌 うとて、踊 ろう。心 ゆくまで!
怜司 兄さんは、自分のツレが刀剣類 と浮気 しかけてたのも知らず、のんきに司会 を引き受けてくれていて、機嫌 よう歌 うてるし、狐 の秋尾 も上機嫌 で踊 っている。
水煙 も、やれやれ、また鬼 斬 って食おかと苦笑 いしてはいるけど、満更 でもなさそうや。
犬もまあまあ、今はまあまあ、元気でてきた。今すぐは無理でも、俺らちょっとずつでも、仲 ようやろな!
だってアキちゃんには皆 が必要や。この日、この場で俺らの絆 を祝 うてくれた皆 が。
おとんがおかんが、蜜柑 太郎 が、水煙 が、可愛 い犬が、怜司 兄さんが、藤堂 さんと、お友達 の神楽 遥 ちゃんが、蔦子 さんが、竜太郎 が、所構 わずいちゃついてる信太 と寛太 が。メガネの雪男 、啓太 が。
そして、ここにはいてへんトミ子が。苑 先生が、画商 の西森 が。
この物語をここまで聞き、俺らを応援 してくれた皆 の励 ましと愛が、アキちゃんと俺には必要や。
どうぞ、幾久 しく永遠 に、俺とアキちゃんのことを、よろしゅうお頼 み申 します。
今までありがとう!
俺はもう、さよならは言わへん。
俺とアキちゃんはいつでも、皆 のすぐそばに居 て、皆 のことを守ってるからな。
もしも何か困 ったら、いつでも俺らに祈 ってええよ。いつでもすぐに飛んでいく。
チーム秋津 がお守りします。
だからどうか今日も明日も、お心安 く、お幸 せに。
あなたの蛇 さん、秋津 の守護神 、水地 亨 でした。
おおきに、ありがとうやで、皆 。ほな、またね。
いつも俺らは君のことを愛してるよ!
どうかそれを、いつもお忘 れなきように。
――第30話 おわり――
――三都幻妖夜話 (4)神戸編・完結――
2017/11/12初稿 脱稿
2021/08/16 fujossy連載 完結
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