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第7話

 普段は大人しい兵頭が、あんなにも積極的で強引な男になるとは思わなかった。それがフェロモンのせいだったとしても、彼の中にも雄としての本能が潜んでいたなんて、驚きと共に喜びがわいてくる。隣に眠る兵頭の、年齢よりも幼い寝顔に笑みが零れる。  私がカズと別れた後、彼が気にしてくれていることは気付いていた。他の男たちと同じように、私のことを求めてくるかと思えば、ただ遠くから見ているだけだった。αの彼が、他のαたちとは同じように接して来ない、そのことが逆に私の興味をひいた。  上司の嵯峨野が転勤になるかもしれない、という話が持ち上がった。それにより私の仕事のボリュームが増えるのは目に見えていて、誰か異動させようかという嵯峨野の言葉に、私は兵頭が頭に浮かんだ。彼を迎え、私は私なりに兵頭との距離を縮めていたつもりだった。そして感じたのだ、彼は私の番になるべく男だと。しかし、真面目で鈍感な彼は、そのことに気付いていなかった。  どうしたら、彼を私に引き寄せられるのか。    だから、ちょっとした賭けに出た。嵯峨野の送別会の帰りに兵頭にアプローチしてみようかと。しかし、そういう時に限って発情期が始まりそうになってしまった。カズと別れてから、不定期になっていたから、すっかり抑制剤のことを忘れていた。でも、それがきっかけになったのだから、ケガの功名かもしれない。  私は兵頭の頭を軽く抱きしめる。それに反応して顔を胸に摺り寄せる兵頭。  ようやく手に入れた。私の運命の番。

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