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第1話 不名誉なあだ名の理由1(西尚親)
どうも俺は惚れやすい体質らしい。そして、多分同時に冷めやすい。
容姿は平凡。成績も普通。家庭環境も普通。何もかもが平均値な俺だが、恋した数だけは人並み以上だと自負している。まぁ、付き合ったことはないのだけれど……。
特技は切り替えの速さ。もちろんどの恋にも本気だけれど、フラれた次の瞬間には、新しい恋を探し、次の日には新しい本気の恋が始まっている。
人呼んで「恋愛フリーク」またの名を……
「平凡ビッチ」
何故そんな不名誉な名が付いたかというと……。
「見つけたぞ、オナホール」
放課後、人気のない廊下を武道場に向かっている途中、空き教室から声が聞こえたかと思うと、教室から伸びてきた手に腕を掴まれ、その教室の中に引っ張り込まれた。
「尚親くん……」
自分の腕を捕らえている相手を確認すると、入学してすぐ好きになった同級生、西尚親 だった。GW前に告白して、玉砕し、恋人でなく“友達”ならいいというのでよろこんでお願いしたのだが……。
俺の思っていた“友達”と彼のいう“友達”の認識には大きすぎる違いがあった。
「尚親くん、俺これから行くところが……」
「お前、部活入ってないだろ。放課後にどこに行くっていうんだよ」
何とか彼から逃れようと、ブンブンと腕を振ってみたら逆に掴む力が強くなった。
これ、絶対あざになってる。絶対。
「先輩の応援っイタタタタタタ」
聞かれたことに応えただけなのに、俺の腕を握りつぶそうとしているのかと疑うくらい力が強くなる。そのまま腕をねじられ、痛みから逃れようと体勢をくずしたところをねじ伏せられてしまう。
これはマズイ。
「無理、無理!今日はヤらない!」
どうにか彼の下から這い出ようともがいてみるが、びくともしない。俺、貞操の危機。
「はは、腰振ってなにいってやがる」
違う。これは腰を振っているのでなく、君から逃げようともがいているのです。
何をしても、言っても、彼には通用しないらしい。ああ、俺はまた流されてしまうのか……。
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