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第70話
侑舞は1人、まだ2月の半ばで冷え込みが厳しい中、暖房すらいれずにリビングでただ茫然と座っていた。
時刻は20時過ぎ。そろそろお風呂にも入らないといけない。
とりあえずご飯は良いから、お風呂にだけ入ってしまおうと重い腰を上げた。
お風呂の湯船に浸かり、また考え込む。
(卒業までなんて言ってないで中退して就職するか?いや、でも高校すら出てない奴を雇ってくれるところなんてそう無いよな。となるとバイトするしかないか。)
そこまで考えたところで、あることに気づく。
(俺、兄さんにバイト禁止されてるんだった。)
そう、身体がそこまで強くないこともあり、バイトはしないように言われているのだ。
(でも、そんなのもう気にしないか。)
自嘲気味に笑うと、侑舞は風呂を出た。
そして夕食を食べることなく、部屋に籠った。
この先もこの状況が続くのであれば、家を出ることは本気で考えなければならないだろう。
だが、侑舞には頼ろうと思える相手がいなかった。
和は言えばきっと了承してくれるだろうが、和だけでなく和の家族にだって迷惑をかけることになる。
人を頼ることを苦手とする侑舞には、誰かの家に置いてもらうことは不可能近い。
だからと言って、自分で家を借りることもまだできない。
八方塞がりだ。
消えることのない表しがたい不安が侑舞をどんどん追い込んでいく。
結局結論は出ぬまま、その日は眠りについた。
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