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第80話
メニューの料理はどれも魅力的で、決めかねた侑舞は碧海におススメを聞いて決めることにした。
「多賀さんはどれがおススメですか?」
「んー?そうだな~。どれも美味しいからおススメだけど、1番はビーフシチューかな。」
「じゃあそれにします。」
「了解。じゃあ注文するから店の人呼ぶね。」
多賀さんがベルを鳴らすとすぐにお店の人が来た。
「失礼します。注文をお伺いします。」
その人が入ってくると多賀さんが驚いたような顔をした。
「なんで岸さんがわざわざ注文取りに来てるんですか。」
「んー?久しぶりに碧海が来たって言うから、顔を見に来たんだ。」
「見に来なくていいんですよ⋯⋯。侑舞くん、この人がこの店のオーナーの岸千里さん。俺の兄貴の、高校の時の後輩なんだ。」
「初めまして!岸と言います。本日はお越しいただきありがとうございます!ゆっくりしていってくださいね。」
その人は、ほんわかとした雰囲気の人だった。
口調も柔らかく、優しい感じが話し方から滲み出ていた。どっちかと言えばこういう店より、カフェの方が似合いそうだなーなんて思っていた。
「初めまして。榊侑舞といいます。メニューを見たんですけど、どれも美味しそうで悩みました。お店の内装も素敵です。」
「何この子!めっちゃいい子だ!!内装はね柊さんにやってもらったんだ~。あ、柊さんは碧海のお兄さんね!高級店ぽい感じにはなってるから、初めてのお客さんは緊張しちゃうみたいだけど、僕は気に入ってるんだ。」
そう話す岸さんは本当に嬉しそうで、この店が大好きなんだなと凄く伝わってきた。
「岸さん、注文取りに来たの忘れてません?」
多賀さんのその言葉に、岸さんはしまったというような顔をした。
「ごめんね。ついつい語っちゃった。注文どうぞ~。」
「グラタンとビーフシチューを」
「かしこまりました。ただいまお作りしますので、暫くお待ちください。」
岸さんは丁寧にお辞儀をすると部屋を出て行った。
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