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サヨナラじゃなくて・・・1

「ねぇ智秋(ちあき)」 「なに、春都(はると)」 兄の春都と弟の智秋は一卵性双生児。 顔も声も性格も、よく似ている。 「好きだよ」 「俺も、好きだよ」 そっと触れ合う、同じ様に柔らかな唇。 禁じられた愛。 解っていても、惹かれ合ってしまう。 「僕がα(アルファ)なら良かったのに・・・」 「αは俺がいい」 「僕が兄なんだけど」 「俺の方が上手くヤれる」 微睡みの中、ベッドでじゃれ合う彼らは、どちらもΩ(オメガ)だった。 今夜、それぞれの(つがい)候補と会わなければならない。 「・・・僕、やだな・・・智秋以外に触られるの」 「俺だって嫌だ。αに犯されるなんて」 「ぉ・・・おか、されるの、かな・・・やっぱり」 「当たり前だろ。Ωはαの子を孕む様に出来てるんだから。まあ、今夜の相手に発情すればの話だけど」 16歳になったΩは、結ばれるべきαに出会った瞬間に発情する。 発情すれば、αは孕ませようとするし、Ωもそれを受け入れてしまう。 だがΩが発情しなければ、αも手を出す事は出来ない。 優秀なαの子を産む事が出来る稀少なΩは、国によって保護されているからだ。 春都と智秋も、幼少期の検査でΩと診断されてから、国の施設で保護され暮らしてきた。 「発情、したくない」 「したくなくても、相手が自分の番だったら勝手に発情する」 「智秋はいいの?発情しても」 「良くない」 兄弟でΩ同士、望む結末は訪れないと知っていた。 それでも、せめて運命の夜が来るまでは、恋人でいさせて欲しい。 「ん・・・はぁ、ちあき・・・っ」 「はると・・・っ」 名前を呼び合い、指を絡ませ、キスをする。 まるで鏡相手に自慰するかの様に。 こうして触れ合っていられる時間も、あと僅かしか残っていない。 「・・・っぅ・・・ふぇ・・・っ」 「泣くなよ春都・・・っ」 春都の涙を拭う智秋の頬にも、涙が零れていた。 こんなに求め合っても、これ以上先にはいけない。 ならいっそ抱き合ったまま、息が止まってしまったらいいのに。 そうすれば、ずっと一緒にいられるのに・・・。 「大丈夫、俺たちはシアワセになれる」 「・・・っ、ゎ・・・かって、る・・・けど・・・っ」 αと番になれば、Ωは何不自由無い生活を送る事が出来る。 国の施設に閉じ込められていなくても、夫のαが守ってくれるのだから。 今よりきっと、楽しく暮らせるはず。 流れる涙を隠すことも出来ないまま、智秋が言った。 「シアワセになろう、春都」 「・・・ぅん。いっしょに、シアワセに・・・っ」 もう逢えないのだとしても、サヨナラなんて恐すぎて・・・。 愛する君といるより他に、僕らはシアワセなんて知らないのに───

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