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《2月14日》

「なんでそんなん貰ってくんだよ!!」 勉強机に座っているコウジに、不機嫌な調子で言うのは、寮のルームメイトで、恋人の幸田瞬助… 今日はバレンタインで、学校から寮への帰り道に他校の女子から声をかけられたコウジ… 寮の同室のため、また瞬助にチョコを渡してくれと頼まれるのかとげんなりしていたところ、その女の子はコウジへ本命のチョコレートを渡しに来たのだった… 内密に瞬助と付き合っているコウジは、驚いたけれどちゃんと断って帰ってきた。 それを報告したら瞬助の機嫌が悪くなったのだ… 「も、貰うぐらいいいでしょ、告白はちゃんと断ったんだから…」 机の上に置いてある、唯一の収穫物に触れながら言い返すコウジ… 「断ったならチョコレートもいりませんって言えばいいだろ!」 「言ったけど、どうしても貰って欲しいって言われたんだもん、せっかく手作りしてくれたし…」 「ッ」 イラっとした表情をする瞬助。 「手作りチョコなんか、女の子から貰うの初めてだし…」 「初めて…」 「ていうか、僕ばっかりに言うけど瞬なんか毎年10個も20個も貰ってるくせに!僕だって…1個ぐらいもらったっていいでしょ!!」 学園で、トップクラスの成績と運動神経…1,2位を争う長身、美形男子の瞬助は、ファンがつくほど人気があって、毎年バレンタインには袋にいっぱいチョコレートをもらって帰るのだ… かくいうコウジは、ハーフのせいで髪は薄い茶色、大きなパッチリとした瞳… 背丈は160センチに満たない、サラサラショートヘアの小柄で可愛い女の子のような容姿のため、今まで男にモテたことはあっても女の子から告白されたことはなかったのだ… 珍しい出来事に動揺して、ついつい女の子の手作りチョコレートをもらってきてしまった。

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