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2月3日の夜。-1

「……あ、おい。大丈夫か?」 今にも泣き出しそうな表情。 それでも何とか踏ん張ろうと涙を見せない小太郎に、ギュッと胸が締め付けられる。 幼馴染みの小太郎は、今年に入ってすぐ、俺の勤める会社に派遣でやって来た。 同じ職場ではあったけれど、班は違う。当然仕事内容は全く違うし、休憩時間も帰宅時間もまちまち。 休日はプライベートが忙しいらしく、これまで二人で落ち着いて話をする時間が取れずにいた。 「よし、飲みにでも行くか?」 「……え」 「いいだろ、今夜くらい」 学生の頃のように強引に誘えば、小太郎は俺を見上げたままこくん、と小さく頷く。 ……あー、やべ。可愛い…… 昔っからいちいち仕草が可愛いんだよなぁ……たまんねぇ…… 今日、3月で契約終了を言い渡されてしまい、意気消沈の小太郎。 だが俺は。……俺は、不謹慎にも! これをチャンスだと捉えている。 心の隙間に漬け込み、傷心の小太郎をどうにかしてモノにしようと企んでいるのだ。 ……派遣が終了したら、手ぶらで俺の元に来いよ…… とか言って、丸め込んでキメるつもりだ。 その為に、同期で清楚ぶった腹黒ビッチ女……梨華から、口説けてオトせるバーを予め聞いておいた。 繁華街。 と言っても、ド田舎なのでたかが知れている。しょぼい。いや、かなり。 ……しかし、暫く駅前通りを歩けば、ピンクの光を放つ妖しい店やラブホの看板がバンバンと目に飛び込んでくる。 「……ねぇ、何処まで行くの?」 少しばかり小太郎の表情が強張る。 不安気な瞳を揺らし、上目遣いで俺を見つめてくる。 ……確かにおかしい…… 梨華の話では、居酒屋が立ち並ぶ中にある洒落たバーって話だ。 「もう少し、先」 「……そう、なんだ……」 ヤバい……警戒されてる…… 確かにこの先は、ちょっとしたラブホ街だ。 ……しかし、ここでおかしな素振りを見せたりキョドったりしたら、余計に小太郎に怪しまれ警戒されてしまう。 ……逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ……… 逃げるな、頑張れ俺!

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