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2月3日の夜。-2
「お帰りなさいませ、王子様」
重厚感のあるドアを開けた瞬間、キラキラと眩しい笑顔を振りまくイケメン達に出迎えられる。
「………」
……あー、えっと……
脳内処理が追い付かず、こめかみを手で押さえる。
場所柄とか店構えとか……
……何なら梨華から店名聞いた時から、なんか引っ掛かってたんだよな……
店名『獣民』
その名の通り、ズラッと並ぶイケメンの頭には獣耳がついている。
何だよ獣民って……
居酒屋バーかと思うじゃねーか、ちくしょう。
それにしても……
ホストクラブとは違うような……
……メイドカフェとか執事カフェとか、そういった類いのものか……?
つーか!口説けるかよ!
……あいつ、梨華。嵌めたな。くそ。
「……ねぇ健太郎……本当にこの店、なの……?」
袖口をクイッと引っ張られて見れば、そこには不安気に小太郎の瞳が揺れる。
その表情は俺以上に動揺し、すっかり怯えきっていた。
……か、かっわいい……っ、!
その縋る様な上目遣いに、俺の心臓がバクバクと跳ね上がる。
それを知ってか知らずか、小太郎が俺の腕に絡んで、ギュッ……って、マジか。
「……いや、間違った」
「えっ、……」
「出ようぜ」
やべぇ……近くはラブホ街だし……
ちょっと強引に誘えば、小太郎チョロいからイケるかもしれねぇけど……
「……うん」
頼り切ったように、小太郎が俺の腕にしな垂れる。
……ってっ!ダメだ。俺。
何もかもすっ飛ばしてヤったら、純粋無垢な小太郎に一生絶交される……
ホテル、駄目。絶対!
小太郎の見ていない所で、表情をコロコロと変えながら何度も頷いたり頭を振ったりする。
平常心を装いながらUターンし、花嫁と共にバージンロードを歩く新郎の如く、歩き出した。
……のはいいが、直ぐに猫耳イケメン達に行く手を阻まれる。
「……王子様、どうぞ此方へ」
「さ、どうぞ」
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