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2月3日の夜。-8
そうして連れてこられたのは、店の奥にある事務所。
その部屋の壁には、ででんっと大きな鬼のお面が飾られていた。
「……んー、ヤっちゃったんだ」
その下にいたのは、鬼の形相とは無縁の爽やかスマイル……″茶々丸″
……いや、やったけど……ヤってはねぇから……
そう言い訳をしたかったが、そのミケランジェロの様な立派な体格を前にした俺は、……やっぱり怯んで何も言えない。
「それなら、制裁を与えなくちゃね」
茶々丸が笑顔のまま言うと、アオに目配せをする。
「丁度……節分イベントの為だけに雇った鬼役の子が、詳細な説明をしたら突然逃げちゃってね。
今日のメインイベント、穴が空きそうで困っていた所だったんだよ」
少し肉厚でセクシーな唇が、綺麗で不穏な弧を描く。
「……存分に、ご奉仕して貰うよ?」
そう言い終わると、茶々丸は俺に、これ以上にない爽やかキラースマイルを炸裂させた。
瞬間、俺の全身がゾゾゾ……と総毛立つ。
爽やかなのに、この人怖ーよ……
「という訳だ。貴様、覚悟しておけ」
メンタルをやられた俺の前に、再び鬼のお面をしたアオが仁王立ちをする。
……鬼役の子が逃げた……?
一体どんな内容なんだ……
たらり、と冷や汗が流れる。
そんな俺に、茶々丸がスマイルを崩さずに口を開く。
「それとも何かな?
慰謝料と賠償金、払う方がいいのかな?」
そう言い終わると、徐に事務机の引き出しから電卓を取り出し、カタカタと叩き出す。
そして打ち出された数字を此方に見える様、印籠の如くバーンと前に掲げた。
「鬼はー外!鬼はー外!」
かくして俺は、スレイブの様な格好で目隠しをされ、四つん這いになり……
「あー、ここにまだ鬼がいるー♡」
「……ちょっ、ま、待っ………くっ、はっ。」
ステージ上でお客様全員から豆……或いはそれ以外のものまで喰らい
狙っていた小太郎を口説くどころか……2月3日の夜は、最悪な幕引きとなってしまった。
「……あの……健太郎、知りませんか?」
その裏で。
俺を尋ね、事務所までそろりとやってきた小太郎は……
「うん。……教えてあげるから、うちで働こうか?」
茶々丸から強引なスカウトを受けていた。
しかし戸惑いながらも、次の就職先が見つかったと内心ホッとする小太郎であった。
《おまけ》
「……お前か!俺の小太郎に手ぇ出そうとした奴は……!!」
後日俺は、小太郎と同棲しているという虎に呼び出され、張り倒されましたとさ☆
おしまい。
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