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その熱にこの身を溶かす_秀次03
「大腿部もよく見たいし」
「わかった。着替えるから」
俺は総一さんに背を向けて服を脱いでいく。やたらと視線を感じるが、我慢だ、海パンを履くまでは。
「うん、背中と尻の筋肉も良い感じについているな」
近くで声がして、俺は慌てて前を隠す。
「ちょっと、離れてろよ」
「あ、悪い。触ってみたくなって」
始める前からそんなんじゃ困るよ。
「モデルの件、やめてもいいんだぞ」
「え、それは嫌だ」
と大人しく机の椅子に腰を下ろした。
「終わるまで机に顔を伏せて」
「わかった」
顔を伏せるのを見届けてから着替えをすませる。
「終わった」
と声をかけると、顎に手をおき、俺を上から下まで眺める。
「そのまま立っていてくれ」
言われたとおりにすると、キャンバスの置かれている場所へ移動し、描きはじめる。
部屋の中は鉛筆を走らせる音だけがする。
それにしても真剣な顔だな。前にも一度見たけれど、射抜くような目で見つめられると、ゾクゾクするんだよな。
いつもは柔らかい雰囲気はいまはない。
話しかけてはいけない、動いても駄目だ。そんな緊張感があり、俺はその中で総一さんの視線だけを感じる。
今、俺のどこを見ているの?
そんな事を気になりだしたら、身体が火照り、下半身が疼きだす。
「あっ」
やばいな、これ。収まりそうにねぇわ。
「疲れたか?」
声をあげたのに気が付き、総一さんが鉛筆を止めた。
「あぁ。少し休憩したい」
「わかった」
良かった。後は、ばれないようにズボンを履いてトイレに行こう。そこで気持ちを落ち着かせれば疼きも収まるだろう。
そう思っていたのに、総一さんの視線は俺に向いたままだ。
「何、見てんだよ」
「ん、休憩だろう? だから見ている」
「いや、休憩だから、その時くらいは見ないで欲しいんだけど」
その視線が落ち着かねぇんだって。
とにかく、さっとズボンを穿いて、トイレに行ってしまおう。
そう思ったのに、
「もしかして……」
と下半身の部分へと視線を向ける。余計にそこに意識がむいてしまい反応してしまった。
頬が熱い。真っ赤になっているんだろうな、俺。
「しょうがねぇだろ、慣れてねぇンだよ、こういうの」
見られないように手で覆い隠すと、
「そうか。抜いてやるよ」
俺の傍に立つ。
「な、しなくていい」
だが、総一さんの手は、立ちあがった箇所へと触れた。
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