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第7話

「んぎゃぁ〜!」 「結衣が呼んでる。そろそろミルクをあげなきゃ」 周りからすれば、ただ逃げているような形にしか見えないかもしれない。 けれども以前いた街から遠くに離れ、奏多と……可愛い娘と3人で暮らしてる今が、心のそこから本当に幸せで仕方がないんだ。 「奏多……抱っこ」 後遺症で自由に足を動かせなくなったため、移動時はこうして奏多に抱きしめて運んでもらっている。 不便と感じることも多いが、こうして奏多にくっつける機会が増えたと思うと……「これはこれで、悪くないかな」と前向きに考えられるんだ。 「ねぇ……いつものやつ、今やって?」 「はいはい。仰せのままに……私の可愛いお姫様」 「そのお姫様呼び嫌ーーんんっ!」 うなじに噛み付かれて軽く吸われたため、思わず高い声が出てしまう。 βとΩだから、こんなことをしても意味が無い事くらい分かっている。それでも……自分という存在は奏多だけのものだという印が欲しくて、毎日こうして強請ってしまうんだ。 だから俺のうなじにはーー消えない傷跡、奏多の歯型がいくつも残っている。 (あの頃の自分へ 俺は今、心のそこから愛した運命の相手に出会えて幸せに暮らしているよ……) 大好きな奏多の腕に包まれながら、俺達は愛する我が子の元へと向かった。 Fin.

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