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第1話
「りーと君、今日は?」
2019年、春より医大の付属の男子高に入学し、それに合わせてマンション寮[恋色]の706号室に越してきた逢坂理衣斗(おおさか・りいと)は、7月6日の放課後に、後輩の玲雄(れお)と今日も一緒に下校する。
「いいよ。一緒に帰ろうぜ」
「わあい! じゃあ、今日も、りーと君の部屋行っていい?」
レオは理衣斗と二人っきりの時だけは、乙女っぽい喋り口調になる。
ぱぁっと柔和な笑みを浮かべて、胸の前で両手を組む、なんと乙女な仕草か。
いちいち可愛げ全開なレオである。
レオと付き合い始めて二ヶ月。理衣斗は今ではもう見慣れたレオの可愛い仕草・口調はシカトして、さっさと帰り支度を済ませると、カバンを背負ってレオと横に並んで廊下に出る。
「良いよ。でも、夏休み入ったら気をつけろよ。たまに、うちの両親が来ることもあるから」
「はーい。まぁ、部屋隣同士だし、俺、勘が良い方だから、すずわかるはずなんだけどね」
「どうだかな。今のところ、レオの勘は外れっぱなしだけどな」
「もう、言わないでよー」
レオにどつかれて、肩にかけてるスクバの取っ手が少しズレる。
「もう、お前は……。女子かよ」
「えへへっ。心は乙女でも、体はちゃんと男子なのです!」
「知ってる」
誰も居ない下駄箱前で、レオの首筋にKissする理衣斗。
「誰か見てたらどうすんの?」
誰も居ないとわかっていながら、それでもやはり気にするレオ。
「別にいいじゃん、見られても。レオへの気持ちは変わらないし、本物だから、僕は見られたら見られたで堂々と交際宣言するよ」
「りーと君、そうゆうとこ、男前だよね」
二人は上履きからローファーに履き替えると、仲良く手をつないで校門をくぐった。
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