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第2話
理衣斗は、活気ある商店街を、こっそり誰にも見えないようにレオの手を自分の制服のスボンのポッケに入れながら歩き、路地裏を進んで行く。
「ここまで来れば誰も居ねえな」
聞こえるか聞こえないかぐらいの僅かな音を立てて、今度は首筋ではなくレオの唇に自らキスする。
十秒間ほどキスした後、二人は路地裏を抜けて寮へ向かった。
「おじゃましまーす」
「はいどうぞ」
706逢坂理衣斗の表札脇の扉を開け、部屋に入る。
居間に着くと、レオの方から話しかけてきた。
「今日ね、お昼休みに部活があって」
レオは料理部所属だ。何でも、料理が好きなんだとか。
「りーと君の為に、チョコチップクッキー、作ったんだけど、食べる?」
レオのスクバから、うさぎ柄のお弁当箱が出てくる。レオがそれをテーブルの上に置くと、理衣斗はまじまじと見つめた。
「バレンタインだから?」
「そう! バレンタインって、ちゃうわ! だいたい、今。夏なんだからバレンタインなわけないでしょ。もう、りーと君てば天然なんだから」
そうじゃなくって、と、レオが蓋を開けながら続ける。
「今日、りーと君の誕生日でしょ! これはその……誕生日プレゼントだよ」
弁当箱の中身を見て、理衣斗は赤面した。
「これっ、おまっ……! ハート型じゃねえか!」
「そうだよ。りーと君への愛だもん」
「これを、料理部のみんなの前で作ったのか?」
「そうだよ。個人作業だったから、一人で生地づくりから始めて作ったんだよ」
「みんなに聞かれなかったのか?」
「勿論、聞かれたよ。誰に作ってんの? って。だから、素直に、りーと君のためだよって答えた」
「はっ――恥ずかしすぎる」
「何? 照れてんの、りーと君」
「当たり前だ、バカ。……でも、」
「でも?」
理衣斗がレオに抱きつく。
「最高だ。好きだ、バカ」
「バカは余計だよ、りーと君」
レオを抱く腕に力がこもる。
「ほんっと、レオってどうしようもなく可愛いのな」
「照れてるりーと君も可愛いよ」
「じゃあ、誕生日祝いにパコって」
「誕生日じゃなくても、いつもパコってるでしょうが」
その日、理衣斗は産声の代わりに嬌声を響かせた。
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