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第4話
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自習の良いところは、昼休みを告げるチャイムの少し前に購買に行けることだ。三年の教室から落ち着きのない足音が階下に向かって行く。
三時間目が始まる前にさっさとお弁当を食べ終わっていた敦人は、購買で買ってきたコロッケサンドと揚げあんパンを机の上においたまま、肘をついて電子辞書で何かを調べては首を捻っていた。周りの友人と言葉を交わし、カードを眺めて不思議な顔をするのを数回繰り返したあと、大きくため息をついて背もたれに身体を預けた。
「よっしゃ、飯食おう。」
「何か分かった?」
「いーや、全然。」
笑いながら三口でコロッケパンを片づけて揚げあんパンの袋を開けている。
遥希は少し離れた席で他の友人と話しつつ、そんな敦人たちの会話を聞いていた。
高校生の移り気と受験生の忙しなさの前では一日の始まりの小さな事件は昼を過ぎれば忘れられ、放課後にはいつもの空気に戻っていた。誰もカードのことなんか話題にしない。それが遥希にとって嬉しくもあり、どこか残念でもあった。
敦人も気づいていないだろうな。まぁ、いいんだけどさ。
帰りのホームルームが終わると同時に遥希は立ち上がって帰り支度を始めた。
ふわふわとした足取りで階段を降り、踊り場で立ち止まって窓の外に目をやると、冷たくて透明な空が見える。向きを変えて階段を半分ほど降りたところで上の方から明るい声がした。
「ハル! なあ、ハル! ちょっと待ってよ。」
心臓が跳ねたのは突然呼ばれて驚いたからだけじゃない。何となく気まずくて、思わず首をすくめて顔をマフラーにうずめた。
パタパタッと小走りの足音が近づいて、背後で止まる。ゆっくりと振り向くと、コートとデイパックを抱えた敦人が踊り場に立っていた。
逆光のせいで眩しくて、遥希は目を細めた。
「何?」
緊張したまま出した声は、遥希が思っていたよりもずっと固く階段に響いた。
「さっぶ! コート着るからちょっと待っとって!」
ぶつぶつ言いながらデイパックを遥希に手渡し、雑に丸めたコートを広げて腕を通し、ボタンを閉める。それからズボンのポケットをまさぐり、手摺に手をかけたまま待っていた遥希にカードを開いて突き出した。
「これさ、K.I.は遥希 のき?」
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