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第1話
届いたばかりのシワ一つない新品の制服に身を包み、ずっと結び方を練習してきたネクタイを結んで鏡の前でクルクルと回ってみる。
似合ってない……。制服に着られている。
よく母親が言う『男の子は成長が早いから、大きめのサイズを買っとこうか』と言われ、ワンサイズ大きめの制服を注文されてしまったのだ。
今は文句を言いたい母親は仕事で長期間海外に移住するらしく、僕は母親の知り合いの男性と共に暮らすことになっている。会ったことの無い他人といきなり暮らせと言われても抵抗がある。せめてどんな人か教えて欲しい。
鏡にはムスッとした自分の顔が写っている。
ダメダメ!せっかくの入学式前なんだから、笑顔ていなくちゃ!友達できなくなる! 一応笑顔の練習もしておいた。ムスッとした顔より、笑顔の方が良いもんね。
そろそろ出なくちゃ。
遅刻しないように早めにホテルをチェックアウトして、バス停に向かった。
バスに乗って、霧ヶ峰という所で降りれば良いんだよね、大丈夫、脳内シミュレーションはバッチリ。
フワッと風が吹き、桜がひらひら舞い散る中僕はバスを待った。
「おい兄ちゃん、ちょっと金貸してくれよ」
「持ってんだろ?財布貸せよ」
「ひぇ……」
なんで……!なんで僕はいつもこうなんだ!
ちゃんとバスに乗れたし、降りたい所で降りられた。あとは徒歩で学校に向かうだけだったのに!無理やり路地裏に連れ込まれ、不良二人に絡まれるなんて……!
本当にツイてない……。
「おい聞いてんのかアァン?」
「さっさと出せっつってんだろ!」
「ひっ……!も、持ってない、です……!」
「じゃあジャンプしてみろよ、ジャンプ!」
ジャンプしたら持ってんのバレるじゃん!そりゃあ多少は持ってるけど、この人たちにあげるために持ってきたお金じゃない。絶対に渡すものか!
逃がしてもらう為にはどうすればいいか、頭をフル回転させて考えた。そして思いついた方法はこれしかなかった。
「ゔぅ……本当に、持ってないんです……。見逃して貰えませんか……?」
「仕方ねぇな」
必殺、泣く。
正直怖くて涙目になっていたし、泣き真似には最適だった。
意外と簡単に許して貰えて、一安心したと思うと、一人に後ろから羽交い締めにされた。
え??
「んじゃ、別のモン貰おうか」
「は……?」
「口も塞いどくか」
「むぐっ!?」
別のモンって何!?助けを呼びたいのに口を塞がれて声を出せない。
絶体絶命のピンチ。
乱暴にブレザーを脱がされ、いよいよシャツに手を掛けようとした時。
目の前の男が吹っ飛んで行くのをスローモンションで見えた。
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