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第45話
授業が終わり、今日は千花ちゃんと蛍ちゃんとクレープを食べに行く事になっている。
女子高生みたいな生活だが、僕も甘い物も可愛い物も好きだから、誘ってもらえるとすごく嬉しい。
校門前で生徒を見送る先生は、今日は有馬先生のようだ。
先生はイケメンだから周りに女子生徒が群がっている。生徒の間でも「先生に彼女はいるのか」や「連絡先の交換したい」などと言う生徒は沢山いる。
少しムッとしてしまうが仕方のない事だ。今の朔夜さんは「先生」で、僕はただの「男子生徒」なのだから。
先生の周りに群がっていた女子生徒が捌けた隙を狙って、千花ちゃんが走り込んでいった。てか足速っ!
あ、先生もちょっとビビってる.......。
「須藤さん、走ったら危ないから」
「先生モテモテだね!」
「そんな事ないよ。これから3人で寄り道?」
「そ!クレープ食べに行くの!先生も来る?」
千花ちゃんが僕と蛍ちゃんの腕を組み、先生も一緒にどうかと誘っている。まだ仕事中だし無理言っちゃダメだよ。
「行きたいけど、まだ仕事が残ってるから。3人で楽しんできて」
「だよね~!自慢しただけ~」
「千花、いい性格してるね」
ふふ、と蛍ちゃんが笑う。いつも無表情で感情が読めないが、最近よく笑ってくれるようになった。
早く行ってきな、と先生に言われ足を進めようとしたその時。
僕はすごく鈍臭いのだ。何も無い所でつまづいてコケそうになる。スローモーションのようにゆっくり地面との距離が近くなって、体を強ばらせて衝撃に耐えるため目を瞑るが.......。
その衝撃は痛くなくて、ふわっと抱きとめられた感覚。
「おっと、危ない。大丈夫?」
「は、はひ.......」
「わー!先生王子様みたい!」
「良かったね、律。大好きな先生に抱きしめられて」
コケそうになったのを、先生が抱きとめてくれたのだった。千花ちゃんの言う通り、本当に王子様みたいだ。
待って待って、カッコよすぎる.......!はぁ、先生好き.......。
思考が停止してしまった。
先生がカッコよすぎるのがいけないんだ!そんないい顔で僕を見つめないで!!
「春海くん、本当に大丈夫?」
「大丈夫だよ、律は先生の顔大好きだから思考停止してるだけ!もう行くね!」
「え、あぁ.......、気をつけてね」
気がついた時には千花ちゃんと蛍ちゃんに引っ張られて歩いていた。
あれ、いつの間にこんな所に.......?
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